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本を、図書館を通じて​

心温まる時間を

佐久穂町図書館 司書

小林 志保さん

子ども時代の幸せな記憶は、心の栄養

 わたしの思い出の味は、小学校の頃の道草の中にあります。イタドリを採って食べたり、天ぷらにしてもらうようにアカシアの花を摘んで帰ったり。桑の実は、高学年の子が採って小さい子たちにも分けてくれました。みんなで一緒に帰りながら、たくさんのことを学んでいたように思います。そういう豊かで幸せな子供時代があるから、わたしはこの町に帰って来たのかもしれない。今の子供たちが心豊かに成長して将来この町に戻って来てくれる、そのきっかけのひとつでも、図書館の仕事を通じて作れたらいいなと思っています。

図書館は佐久穂町生涯学習館「花の郷・茂来館」の1階に。
心地良い光が射し込む空間で、新刊書や雑誌も充実。

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​本のチカラを伝えるには

 活字離れや出版不況が進む中で、図書館の利用が話題になることも多いのですが、佐久穂町では5年前に比べると貸出数は減ってきています。インターネットが普及して調べものに図書館を利用しなくなったり、スマートフォンで動画などが簡単に見られるようになったりしたことが影響しているのでしょうか。便利なものの恩恵を受けながら、本の持つ魅力や育む力をいかにして伝えられるかがわたしたちの課題になってくると思います。
 今度公民館との共同企画で、子供たちに人気の絵本「からすのパンやさん」を読んで、そこに出てくるいろいろなパンを作ってみようというイベントをします。絵本のいちばん楽しい場面が、リアルに体験できる…きっとワクワクしながらパンをこね、いい匂いに焼けるのを楽しめると思います(イベントは12月21日。取材は11月に行いました)。

多様化している図書館

佐賀県武雄市が株式会社カルチュア・コンビニエンス・クラブを指定管理者にして、蔦屋書店とスターバックス・コーヒーを併設した新しい図書館を開いて話題になりましたが、ほかにも注目を集める図書館があります。東京都千代田区の千代田図書館は、司書のほかにコンシェルジュがいて、神保町の古書店まで含めた地域案内をしてくれます。佐賀県伊万里市の図書館は、市民ボランティアが運営の大きな役割を担っていて、「伊万里を育て市民とともに育つ市民の図書館」を標榜しています。東京都武蔵野市の文化施設「武蔵野プレイス」は、図書館と生涯学習支援や青少年活動支援を結びつけ、人と人との交流を生み出し、地域の活性を高めようとしています。中高生が自由に使えるスタジオやスペースがあり、多感な世代の居場所づくりにも一役買っています。これらのように、図書館を資料や本を探し借りる場所としてだけでなく、人や情報が集まる場所としてもっと多面的な機能や役割を持たせられないか、そんな模索が始まっています。

図書館を交流の生まれる場に

 わたしたちは、もっと多くの方にもっと気軽に図書館を利用していただけたらと思っています。ここは日当たりもよくて、気持ちのいい場所です。どんな本があるのか、わたしたちに気軽に聞いていただけたらうれしいです。小さなお子さんがいる方も「泣いたり本を破ったりしたら…」と心配し過ぎずに、楽しい時間を過ごしていただきたいのです。わたしも、お子さんにはできるだけ声をかけるようにしています。確かに大声で騒いだり、迷惑になる行為は困りますが、利用者の方が本のことを話したり、小さな子が声に出して読んだりすることは、図書館の利用として当然の範囲に入ると思うのです。人が集い、交流が生まれる…、そんな場所にできたらいいと考えています。みなさんの声を聞き、いろいろな事例に学んでここで何ができるのかを探していきます。

絵本は見やすい平置き棚に。

北部地震直後の特集コーナー。
テーマはタイムリーに変わる。

郷土資料は奥の多目的室に。

取材を終えて

今回、編集部からのリクエストで小林さんの「思い出の味」「おいしそうな本・物語」をお聞きしました。 思い出の味は本文のとおりです。

「野の花ごはん」
前田まゆみ/作 白泉社
野原や森の植物のおいしいレシピを
かわいいイラストで紹介。

「ぐりとぐら」
なかがわりえこ/文 おおむらゆりこ/絵
福音館書店
やっぱりあのカステラはそそりますよね。

「からすのパンやさん」
かこさとし/絵・文 偕成社
からすの一家が焼く、ユニークで
おいしそうなパンがいっぱい!

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