「日本酒の素晴らしさをもっと
伝えていきたい」
第33回全国利き酒選手権優勝
由井 志織さん
惨敗からのリベンジ
初めてきき酒に挑戦したのは、一昨年の小満祭でした。無料だったし、軽い気持ちで参加しました。味を比べることには自信があったのに、全然当たらなかった…。それがすごく悔しかったんです。それまであまり日本酒を飲む機会がなかったのですが、毎日お酒を少しずつ飲んで、味を感じ、覚えるようにしました。同じお米と酵母を使っても、蔵によって味や香りが違うお酒ができるし、香りにもレモンっぽいとかぶどうっぽいとかいろいろなニュアンスがあります。のどを通ったときの感じと、その後に上がってくる香りや味はまた違うし、本当に奥が深くて、おもしろいんです。
全国きき酒選手権では筆記試験ときき酒があります。きき酒では、7分間で7種類の日本酒を味わう事を2回行い、一致する度合いを競います。まず、最初のテーブルで、AからGの札がついたお酒を味わいます。味の特徴などをメモしてもかまいません。次にテーブルを移動して、イからヘの札がついたお酒を味わい、AからGのどれに、イからヘのどれが一致するのかを当てるのです。今回の個人戦では全問正解者が多く、プレーオフを行って優勝が決まりました。きき酒のお酒を口に含むだけで飲まない方もいらっしゃいますが、わたしは飲むので、ほろ酔いです(笑)。
撮影協力:ギャラリーくろさわ
香りが際立つ酒器を開発中
選手権のときにも感じたのですが、よくあるきき酒用のおちょこだと、日本酒の香りがよくわからないんです。口に触れる器の厚さによっても、味が全然違うように感じられるのですが、きき酒のおちょこは厚いですよね。せっかく華やかな香りや複雑な味わいを秘めているのに、それを引き出さないともったいないと思います。それで、ガラスや陶器、いろいろな形や厚さの器を集めて試してみましたが、自分の理想を形にしてみようと、今、試作をしている最中です。美濃焼の窯元で、とても薄い磁器を作れるところにお願いするのですが、まずは工業試験場で3Dプリンターで試作品を作って、修正しながら本番の製作にかかります。日本酒を飲むときのニュースタンダードになるようなものを提案できたらいいなと思います。
3Dプリンターで出力した試作品
集めた酒器の一部
(左)
日本酒用の陶磁器のもの
(中央)
さまざまな形のグラス
(右)
そのほかの陶磁器。
湯呑み茶碗のような形のものは、非常に薄くて軽い。
扱いが難しいので大量には売れず、今は作り手が本当に少なくなってしまったという
日本酒の良さを伝えていくために
きき酒をする前のわたしにとって、日本酒は「職場の年配で偉い方々がいらっしゃる会で飲むもの」というイメージがあって、自分ではもっぱらビールやワインを飲んでいました。日本酒を飲むようになってからは、ビンやラベルから受ける印象と味の印象とが必ずしも一致しているわけではなくて、そういう意味で損をしている部分や、うまく伝わっていないことがあるように感じています。きき酒のときに理屈を考えて味わっていると、味のマイナス面のほうがより強調される気がするので、おいしいところをポジティブに表現したり、評価の軸をもっと多様にしたりできれば、もっと伝わる言葉や表現方法が見つけられるのではないかと思うのです。
きき酒中の真剣な横顔
東京オリンピックで日本酒を
きき酒をする前のわたしにとって、日本酒は「職場の年配で偉い方々がいらっしゃる会で飲むもの」というイメージがあって、自分ではもっぱらビールやワインを飲んでいました。日本酒を飲むようになってからは、ビンやラベルから受ける印象と味の印象とが必ずしも一致しているわけではなくて、そういう意味で損をしている部分や、うまく伝わっていないことがあるように感じています。きき酒のときに理屈を考えて味わっていると、味のマイナス面のほうがより強調される気がするので、おいしいところをポジティブに表現したり、評価の軸をもっと多様にしたりできれば、もっと伝わる言葉や表現方法が見つけられるのではないかと思うのです。
聞き手・文責:赤堀公子
海外でも高い評価を得ている黒澤酒造の日本酒。
ギャラリーくろさわ内でも購入できます
吉野琴美さんと出場した団体戦でも優勝。
二冠に輝きました
きき酒の全国大会で。商品はお米とお酒